スモモも桃も桃のうち?

元生徒 報道によると、某市役所の職員が業者と会食した際に、最低制限価格の算出根拠となる設計金額を漏らしたとして、官製談合防止法違反・守秘義務違反等に問われ、有罪判決が下されるとともに、懲戒免職処分を受けたそうです。

 他市で起きた事件とはいえ、同じ市役所職員としては、居た堪れません。

老先生 わしもお世話になっておる市役所じゃから、残念でならん。。。

 毎年、全国の自治体で同様の事件が起きるの〜。このような不祥事は、嘆かわしいことじゃが、不祥事が発覚するということは、その組織には自浄作用があり、健全である証拠とも言えるの。

元生徒 同じく報道によると、某市が公共工事に携わる職員約300名に聞き取り調査した結果、71%が官製談合防止法や入札情報漏えいに関する研修を受けたことがなかったそうです。

老先生 業者等の利害関係者から接待を受けることが地方公務員法上の信用失墜行為の禁止に違反することや、入札情報漏えいが地方公務員法上の守秘義務違反になることは、容易に分かるはずじゃし、どこの市役所であっても、通常、地方公務員法の服務については入庁1年目から3年目ぐらいまでに研修を実施しておるはずじゃ。  

 官製談合防止法(入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(平成十四年七月三十一日法律第百一号))については、公正取引委員会が無料で研修講師を派遣してくれるから、研修を実施した方が良いじゃろうな。

https://www.jftc.go.jp/event/kousyukai/kandanpoukensyu.html

元生徒 強制的に受けさせられる研修って身が入らないというか、研修時間分仕事が溜まって大変というか。。。苦笑  

 入庁前に法律を勉強したことがない同僚職員は、法律の研修が難しくて、訳が分からないと文句を言っていますし。。。苦笑

老先生 オイオイ、職員研修を受講することも仕事の一部であって、その時間分の給与も支給されておるんじゃから、貴重な税金を無駄にせぬように、真面目に受講せねばダメではないか!  

 どんな職種であろうとどこの部署であろうと、市役所職員の職務は常に人権侵害の危険性を伴うのじゃから、法律(条例を含む。以下、同じ。)に従って職務遂行をせねばならんのじゃ。 また、自分の身を守るためにも、法律を知り理解せねばならんというのに。。。

 どんな職業であっても、一人前のプロになるためには、厳しい修行が不可欠じゃ。法律は市役所職員を縛るものであると同時に、様々な行政課題を解決するための道具でもあるのじゃから、行政のプロとして道具である法律に精通しておかねばならんのじゃよ。

元生徒 申し訳ございません。。。苦笑

老先生 何事においても、プロの道は厳しいの〜

 じゃが、全体の奉仕者である公務員には、民間企業の従業員とは異なって、身分が保障されておる。それは、いつクビになるかどうか不安定な状態では市民のために一所懸命に奉仕できないからじゃ。 市民の負託に応えられるように、道は険しくとも行政のプロとして成長してほしいものじゃ。

元生徒 はい!「初心忘るべからず」で、辞令交付式・宣誓式の時に誓ったことを思い出して、これからも頑張ります!

老先生 うむ。期待しておるぞ!

 話を戻すと、確かに、研修を受けたからというて、すぐに理解し実行できるわけではない。 法律初心者が法律を難しく感じるのはやむを得ないが、それは言葉使いが難しいだけであって、法律は、道徳とは異なり、最低限度のルールじゃから、常識的に理解でき、実践できるものなんじゃよ。

 例えば、道路交通法について詳しく知らなくても、「①自動車は左側通行、②歩行者は右側通行、③道路標識と信号を守る」という3つを実践すれば、通常、交通違反を侵すことはない。

 同様に、公務員倫理、コンプライアンス、官製談合防止法など、いろいろ言われておるが、次の3つのことさえ実践すれば、刑罰を科されたり、懲戒免職処分を受けたりすることはないんじゃ。

元生徒 その3つとは何ですか?

老先生 簡単なことじゃ。


1 「武士は食わねど高楊枝(たかようじ)」→行政のプロとしての矜持(きょうじ)を持て!

 「武士は、貧しくて食事に困っても、今食べたばかりかのように楊枝を使う。」ということから、痩せ我慢をすることだと思われておるが、そうではない。

 「武士たる者は、たとえ貧しくても矜持(自信と誇り)を持って清貧(富を求めず、正しい行いをすること)に安んじる。」という意味じゃ。  

 行政のプロとしての自信と誇りを持てば、誘惑を断ち切り、不義を働こうとは思わないものじゃ。


2 「君子危(あや)うきに近寄らず」→己の良心に従って危険を避けよ!

 「立派な人というのは、聡明じゃから、自らの行動を慎み、危険なところに近寄らない。」という意味じゃ。  

 これぐらいならばいいだろうと安易に業者等の利害関係者と公私混同して接したり、ギャンブルに走ったりするから、身を滅ぼすのじゃ。

 己の胸に手を当てて、やって良いかどうかを訊ね、己の良心の命じるままに行動すれば良いのじゃよ。


3 「李下(りか)に冠(かんむり)を正さず」→疑われるような行為をするな!

 「スモモが成っている木の下で冠を直すと、スモモを盗むと疑われるから、冠を直してはならない。」ということから、「嫌疑を受けるような行為をするな。」という意味じゃ。  

 常に市民の目を意識して、市民から見たら不正をしていると疑われるだろうなぁと思われる行動をしなければいいのじゃよ。


元生徒 なるほど!この3つさえ実践すれば、法律について詳細に知らなくても、処罰されたりしませんね♪

老先生 そうじゃな。

 職員さんたちは、総じて倫理観の高い方たちじゃから、普段から実践しておられることばかりじゃと思うが、目先の利益に目が眩んだり、ちょっとぐらいいいだろうと自分を甘やかせてしまうのじゃろうの〜。

元生徒 肝に命じて実践するようにします!

老先生 うむ。

 ところで、「スモモも桃も桃のうち」と言えるかの?

元生徒 早口言葉ですか?笑

すもももももももものうちッ!

言えましたッ!イェ〜♪笑

老先生 実は、スモモは、桃ではなく、バラ科のプラムのことなんじゃよ。笑

元生徒 えーッ???笑

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