下記の日経新聞によれば、「政府は外国人や外国資本の企業による国内での土地取得を制限する検討を始めた。米軍や自衛隊の関連施設、原子力発電所の周辺など安全保障上の懸念がある地域などを対象に事前審査などを求める案がある。現在、日本国内の土地は原則として誰でも取引できるが、安全保障の観点から、一部の土地取引は監視を強める。」そうだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54637500R20C20A1SHA000/
漸(ようや)く政府も重い腰を上げるようだ。30数年前、私が学生の頃から外国人の土地取得については、識者の間で憂慮されていたが、平成11年(1999年)頃から右肩上がりで外国人よる土地の爆買いが顕著になり、北海道では道庁が統計を取り始めた平成18年(2006年)から同29年(2017年)までに累計2495ヘクタール、東京ドーム531個分になるということが明らかになって、各自治体も水源地を保全するための条例を制定するようになり、マスコミも安全保障上の問題を懸念するようになった。遅きに失した感があるが、やらないよりもマシだ。
国家の安全保障なくして、人権保障なんぞ絵空事にすぎないことは、紛争地域に行かずとも、子供でも分かる。国民の安全を第一に考えるべき政府が平和ボケしていて、二国間協定や世界貿易機関(WTO)協定を締結する際に、外国人の土地取得について何らの留保も付けなかった脇の甘さがそもそもの原因だ。
その結果、外国人の土地取得については、内国民待遇しなければならず、原発や防衛施設の周辺を外国人に買い占められても、今まで規制できずにいたわけだ。
今後は、二国間協定の相手国や世界貿易機関(WTO)の加盟国との外交交渉に委ねられるため、紆余曲折が予想されるが、妥結に至った場合には、国内法を整備する必要がある。
しかし、幸いなことに、すでに外国人土地法(大正十四年法律第四十二号)があり、その第4条第1項には、「国防上必要ナル地区ニ於テハ勅令ヲ以テ外国人又ハ外国法人ノ土地ニ関スル権利ノ取得ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得」と定められ、同法同条第2項には、「前項ノ地区ハ勅令ヲ以テ之ヲ指定ス」と定められている。
戦前に制定された外国人土地法施行令(大正十五年十一月三日勅令第三百三十四号)は、司法省関係許可認可等戦時特例等廃止ノ件(昭和二十年十月二十四日勅令第五百九十八号)によって廃止され、これに代わる政令(この外国人土地法では「勅令」となっているが、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律(昭和二十二年法律第七十二号)第2条第1項の規定により、「政令」と読み替えることになっている。)は、定められていない。二国間協定や世界貿易機関(WTO)協定により、外国人の土地取得について、内国民待遇をしなければならないために、政令を制定できなかったからだ。
そのため、外国人土地法は、昭和20年(1945年)以来、事実上死文化していたわけだ。
外交交渉さえ上手くいけば、あとは内閣が政令を定めるだけで済む。この政令の制定により、事実上死文化していた外国人土地法が復活するわけだ。非常に珍しいケースと言えよう。
国民の安全を守るために、外交交渉が上手くいくことを願っている。
なお、根拠規定が載っているので、下記の質問主意書と答弁書を、参考までに載せておく。
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/syuh/s177159.htm
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/177/touh/t177159.htm
また、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)については、外務省のHPに載っている。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/it/page25_000396.html
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