裁判所の地図記号。
国土交通省国土地理院によると、「裁判所の記号は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所や簡易裁判所をあらわします。最高裁判所は名前であらわしていて記号は表示しません。 この記号は、むかし裁判所が裁判の内容などを立て札(たてふだ)を立てて知らせていたことから、立て札の形を記号にしました。」とある。
3 日本語の「さばく」の語源
日本語の「さばく」は、「わける」の古形「わく」に語調を整える接頭辞「さ」がついたものが語源らしい。
元々、「わける」という意味で、「さわく」→「さばく」に変化したわけだ。
「さばく」には、①「さば(捌)く」と②「さば(裁)く」という二つの意味がある。『明鏡国語辞典』(大修館書店)によれば、この二つの言葉は、同語源だそうだ。
①「さば(捌)く」には、動物や魚をバラバラに切り分ける、道具や材料などを上手に扱いこなす、複雑にいりくんだ事柄や面倒なことを上手く整理したり処理したりする、品物を売って整理する、というような意味がある。
②「さば(裁)く」には、理非善悪を明らかにする、裁断するという意味がある。
我々の祖先が狩猟採集生活をしていた時代において、獲物を捌いて、不要な部位を捨て、長年の慣習に従って必要な部位を仲間同士で分けるとともに、その分配をめぐってトラブルが起きた場合には、これを裁いていたであろうことは、想像に難くない。
「さば(捌)く」と「さば(裁)く」が同語源なのもそのためだろう。
4 「裁判」の変遷
このように、古来より「さばく」が用いられてきた一方で、漢字が移入され、「訴訟」や「裁判」という漢語が用いられるようになった。
「訴訟」という言葉は、聖徳太子の『十七条憲法』の第五条に見える。
『精選版 日本国語大辞典 』(小学館)によれば、「裁判」は、「古代末から中世末、裁判所が訴訟の理非を判断して決定すること」という意味で用いられ、「石清水文書‐治安三年(1023)一〇月五日」が例として挙げられている。
しかし、実際には、「訴訟」や「裁判」よりも別の言葉が多用されていたようだ。
すなわち、渡部万蔵『現行法律語の史的考察』によれば、
律令制の下では、民事の裁判を「聴訟」、刑事の裁判を「断獄」といい、両者を合わせて「聴断」又は「裁断」といった。
鎌倉時代以降、訴訟を「沙汰」(さた)といい、「所務沙汰」(御家人の所領に関する訴訟事件)と「雑務沙汰」(質入、売買、賃貸に関する事件)が今の民事訴訟で、「検断沙汰」(夜討、強、窃盗、殺人、放火などの事件)は今の刑事訴訟に相当し、訴訟に対し裁判することを「裁断」又は「聴断」といい、その判決を「裁許」といったそうだ。
ちなみに、『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)によれば、「鎌倉幕府の裁判制度を初心者向きに解説した書である『沙汰未練書』に、「沙」は砂、「汰」は選び分ける義であるから、砂を水中で揺すって中から砂金などを選別することをいうとの趣旨が述べられている。これは字義にもっとも近い説明であろう。「沙汰」はここから転じて、人や物事の是非、善悪、精粗を選び分け、正しく判断し処理する意味となった。」とある。
江戸時代の裁判については、すでに述べたので、省略する。
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