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 以前にもご紹介した記事だが、『日本人は集団主義的』という通説は、誤りだそうだ。


 世間では女性管理職が少ないと言われるが、男性職員が集団主義的に、つまり男性職員が共謀して女性職員を冷遇しているわけではない。

 また、様々な市役所で聞いたが、人事課の係長や係員はもちろん、人事課長ですら自分がどこの部署に異動になるかが分からないそうだ。 


 「このブラックボックスとも言える人事の謎を『解明した』のか!」と驚きをもって、東京新聞の下記の記事を読んだ。


 「なぜ女性は昇進できない」を解明した川崎市職員にたっぷり聞いた 「軽視される仕事」と「形状記憶合金」

 興味深い指摘もあるが、「解明」にはほど遠い。


 佐藤直子氏の専攻は、労働経済論、ジェンダー論だそうだが、男性と女性の二項対立の色眼鏡で見ていたのでは、見えるものも見えなくなるのではないかと思った。


 例えば、市役所の業務が多岐に亘り、異動によって転職したぐらいに職務内容が異なることは、今も昔も変わらない。

 佐藤氏は、30代前半で労務課に配属されて2年目で異動になり、これまで担当したことがなかった職務だったので、何も分からなかったそうだが、これは、女性だからではない。勝手な想像だが、「役所全体で取り組む大きな仕事で、目立つポジションでした」とあるので、佐藤氏のこれまでの働きぶりを積極的に評価して、佐藤氏ならばやり遂げてくれるはずだという期待を込めての異動だったのではなかろうか。仮にそうではなかったとしても、ものは考えようであって、期待されていると考えれば、期待に応えようと他人に頼らずに主体的に勉強するようになるものだ。

 しかも、佐藤氏は、現在50歳だから、佐藤氏が30代前半の頃には、キャリア形成、キャリアパス、キャリアプランなど、今日当たり前に用いられている言葉自体がないか、あってもあまり普及しておらず(記憶が曖昧で間違っていたらお許しいただきたいが、多分なかったと思う。)、こういうことをほとんど考慮に入れずに人事行政が行われていたと言っても過言ではなかろう。

 そうだとすれば、現在の価値観で、佐藤氏の場合にはジェンダー論で過去を断罪するのではなく、人事行政の歴史的変遷を踏まえて考察する方がよいのではないかと思ったわけだ。


 また、やりたくない仕事や興味のない仕事であってもきちんとやり遂げなければならないのが仕事だ。

 元瀬戸市役所職員の柴田朋子氏の下記の記事を30代前半の佐藤氏に読ませてあげたいとも思った。


 公務員のキャリア形成、大事なのは「何をしたいか」ではなく「どうありたいか」。




 

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