重箱の隅をつつくようだが

 参政党が2年がかりで取り組んできた「新日本憲法(構想案)」が公表された。

 内容については、賛否両論あるだろうが、時間がもったいないので、ここでは触れない。

重箱の隅をつつくようで恐縮だが、形式面について触れようと思う。


 私は、おっちょこちょいでミスをよくするので、偉そうなことは言えないのだが、プー太郎である私と公党を同列に論じることはできない。

 公党が2年がかりで練り上げ、複数人が何度も推敲を重ねたであろう「新日本憲法(構想案)」には、ざっと見た限り、気になる点が5つがある。


1 国歌

 前文と目次の間に、国歌を掲載している。注には、「憲法制定を言祝ぎ、国歌を掲載した」とある。

 憲法に国歌を掲載してはならないというルールはないので、ミスではないが、本則の第4条第3項に「国歌は君が代」とあるので、重複している。


 ちなみに、フランスの1958年憲法(いわゆるド・ゴール憲法)は、「第一章 主権」に置かれた第二条に「国旗は青、白、赤の三色旗である。国家は『ラ・マルセイエーズ』である。共和国の標語は『自由、平等、博愛』である。」と規定されている。

 そして、旧フランス植民地諸国の憲法は、フランス憲法の方式をそのまま継受している。例えば、セネガル共和国の憲法第1条には、「法律は共和国の国璽と国歌を定める。」とあり、マリ共和国の憲法第1条には、「国歌は『ル・マリ』(le Mali)である。」とあるように、憲法の本則の第1条から第3条あたりに国歌や国旗などを定めている。


2 國體

 「國體」(前文、第22条第1項)という言葉だけ正漢字を用い、これ以外は常用漢字を用いており、一貫性に欠ける。

 また、「國體」は、第4条第4項に「公文書は、必ず元号及び国語を用い、国民が理解し易い文章で記さなければならない。」(下線:久保)とあることと矛盾する。

 個人的には、正漢字・歴史的仮名遣いが国語の表記として正しいと考えているが、第4条第4項からすると、常用漢字・現代仮名遣いに統一した方がよろしかろう。


3 権利と権理

 前文では「権利」を用いているのに、本則では福澤諭吉先生に従って「権理」を用いており、一貫性に欠ける。

 いずれかに統一した方がよろしかろう。伝統を重んじるのであれば、明治以来用いられている「権利」に統一するのが無用な混乱を招かず、無難だろう。


4 配字

 法制執務は、法律で決められていないが、先人たちが試行錯誤しながら作り上げてきた慣習法である。

 「新日本憲法(構想案)」の本則の条項の配字は、すべて間違っている。しかも、条文によって配字が異なり、一貫性に欠けている。


 法制執務では、「本則が条で成り立っている場合の条名の初字は、第一字目とし、「第◯条 …」のように、条名の下を一字空けて条文を書き出し、改行する場合の初字は、第二字目とする。ただし書又は後段の初字は、別行としないで書き出す。このことは、項又は号の場合等においても、同様である。」

 「条中の法文の段落をつける「項」については、第二項以下に2、3、4…と順を追って算用数字で項番号を付けるが、その位置は、第一字目とする。項の文章も、「2 …」のように項番号の下を一字空けて書き出し、改行する場合の初字は、第二字目とする。」(法制執務研究会編『新訂ワークブック法制執務』ぎょうせい 752頁。下線:久保)


5 補則

 大日本帝国憲法や日本国憲法には、法令の附則に相当する「補則」が置かれているが、「新日本憲法(構想案)」が「補則」が置かれていない。

 「新日本憲法(構想案)」が実際に制定されたら、日本国憲法の内容と矛盾抵触するものが数多くあるため、関係法令を制定改廃する必要があるので、一定の準備期間を置いてから施行する必要があるが、「補則」が置かれていないということは、そこまで視野に置かれていないことを意味する。


 法制執務では、附則まで書けて一人前と言われているのだが、補則が書けていない参政党は、半人前ということになる。


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