鼬(いたち)の最後っ屁?

 学歴詐称疑惑の伊東市田久保市長が、今後、新たに就任する市長に、学歴証明書などを市に提出させ、市役所職員がこれを確認の上、市のホームページに掲載するほか、広報誌に掲載する基礎資料として利用するなどの新たな要領を定めたそうだ。

 下記のリンク先に『伊東市長就任時提出書類等に関する要領』(PDF)がある。

 この点、三葛敦志(みかつら あつし)弁護士が反対意見を述べておられる。

 現行の公職選挙法の建て付けを前提とする限り、三葛弁護士のご意見に説得力があると考える。


 そもそも「普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。」のだが(地方自治法第14条第2項)、当該要領は、条例ではないから、新たに就任する市長を法的に拘束するものではない。


 条例によらずに、新たに就任する市長に各種書類の提出義務を課し、提出書類の取得に要する費用を新市長に負わすことは、地方自治法第14条第2項に反し、違法だ。


 当該要領には、発令形式が示されていないけれども、一般的に大綱的な「要綱」・細則的な「要領」は、訓令の一種だと考えられている。

 訓令は、職務命令の性格を有する。職員は、「上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」(地方公務員法第32条)。

 しかし、職員は、重大かつ明白に違法な訓令には従うべき義務がないというのが判例だから、担当課の企画部秘書広報課の職員さんたちは、当該訓令を無視すればよいのだが、職務命令違反による懲戒処分のリスクを職員側に負わせるのは酷だ。

 当該要領が訓令である以上、新市長は、当該訓令を一存で(市長決裁で)廃止することができるから、新市長は、さっさと当該要領を廃止して、当該事務から企画部秘書広報課の職員さんたちを解放してあげてほしい。




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