就籍

 聴き慣れない言葉だと思うが、就籍というのは、本籍がない者が戸籍に記載されることをいう(戸籍法第110条から第112条まで)。最近、少しずつマスコミで取り上げられるようになった無戸籍児問題でご存知の方もいらっしゃるかも知れない。


 就籍をするには家庭裁判所の許可又は判決を得て就籍の届け出をする (戸籍法 第110条、第111条) 。ただし、出生届を怠ったために無戸籍となっている場合に、その届出義務者があるときは出生届(戸籍法第49条)をすることにより、また乳幼児の場合には棄児発見調書(戸籍法第57条)によって同一の目的を達することができる。


 新たに就籍する者については、原則として、父母がある場合にはその戸籍に入籍し、父母がない場合には自由に氏を選定し新戸籍が編製される(戸籍法第22条)。


 なお、棄児が言葉や身体的特徴から日本人の子と推定しにくい場合であっても、棄児発見調書(戸籍法第57条)によって、日本国民として新戸籍が作られることになる(国籍法第2条第4号)。

 棄児は、親が誰なのか分からない以上、日本人としての血統を客観的に確認できないため、人道的見地から日本国内で発見されたという理由で属地主義が適用され、本当に出生届が出されていないのか、また届出義務者が存在しないのか、客観的かつ明白な証拠資料がなくても、棄児発見調書に基づいて戸籍が創設され、日本国籍を取得することになるわけで、血統主義の抜け道になっている。

 そのため、わざわざ来日して、障害を持った乳幼児を捨て子にする外国人や、乳幼児を捨て子にする不法滞在者が少なからずいるらしい。


 通常、就籍が行われるのは、出生届を怠ったり、戸籍の記載漏れがあったりした場合だ。法務省のHPの「無戸籍の方が自らを戸籍に記載するための手続等について」も、出生届を提出しなかったケースを前提にQ&Aを作成している。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00047.html


 ところが、下記の記事で初めて知ったのだが、記憶喪失の場合にも、就籍が行われるそうだ。記憶が戻らないケースもあるんだなぁ・・・

 リンクが切れているので、スクショを貼らせていただく。

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202003/20200324_73026.html


cf.1国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)

(出生による国籍の取得)

第二条 子は、次の場合には、日本国民とする

一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。

二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。

三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき


cf.2戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)

第二十二条 父又は母の戸籍に入る者を除く外戸籍に記載がない者についてあらたに戸籍の記載をすべきときは、新戸籍を編製する

第四十九条 出生の届出は、十四日以内(国外で出生があつたときは、三箇月以内)にこれをしなければならない

○2 届書には、次の事項を記載しなければならない。

一 子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別

二 出生の年月日時分及び場所

三 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍 四 その他法務省令で定める事項

○3 医師、助産師又はその他の者が出産に立ち会つた場合には、医師、助産師、その他の者の順序に従つてそのうちの一人が法務省令・厚生労働省令の定めるところによつて作成する出生証明書を届書に添付しなければならない。ただし、やむを得ない事由があるときは、この限りでない。

第五十七条 棄児を発見した者又は棄児発見の申告を受けた警察官は、二十四時間以内にその旨を市町村長に申し出なければならない

○2 前項の申出があつたときは、市町村長は、氏名をつけ、本籍を定め、且つ、附属品、発見の場所、年月日時その他の状況並びに氏名、男女の別、出生の推定年月日及び本籍を調書に記載しなければならないその調書は、これを届書とみなす

第五十八条 前条第一項に規定する手続をする前に、棄児が死亡したときは、死亡の届出とともにその手続をしなければならない。

第五十九条 父又は母は、棄児を引き取つたときは、その日から一箇月以内に、出生の届出をし、且つ、戸籍の訂正を申請しなければならない。

第百十条 本籍を有しない者は、家庭裁判所の許可を得て、許可の日から十日以内に就籍の届出をしなければならない

○2 届書には、第十三条に掲げる事項の外、就籍許可の年月日を記載しなければならない。

第百十一条 前条の規定は、確定判決によつて就籍の届出をすべき場合にこれを準用する。この場合には、判決の謄本を届書に添附しなければならない。

第百十二条 就籍の届出は、就籍地でこれをすることができる。



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