北海道選出の自民党の長谷川岳参院議員が、コロナ禍において不倫をしていただけでなく、北海道庁や札幌市役所の職員に対してパワハラをしたと話題になっている。
何処の馬の骨とも分からぬ連中が議員になった途端に威張り散らすことは、よくあることで、今に始まったことではない。
これに対して、洋の東西を問わず、生まれ育ちの良い人は、通常、威張り散らしたりしない。
例えば、王様と言えば、威張り散らしているイメージがあるかもしれないが、王様を意味するKINGキングは、「血統・血族」を表すKIN-キンから派生した言葉だ。「親切な」を表すKindカインドも、KIN-から派生した言葉であって、本来は「生まれの良い」を意味する。つまり、血筋が良い・生まれが良いから、Kind親切なのだ。
また、gentlemanジェントルマン(紳士)のgentleジェントルは、「穏和・やさしい」を意味するが、本来は「生まれのはっきりした」・「高貴な家系」を意味する。nobleノーブル(高貴な)と同じ意味で、同じ良い家系であっても、紋章を用いる権利を有する者をnoblemanノーブルマン(貴族)、紋章を用いる権利のない者をgentlemanジェントルマン(紳士)と呼ぶようになったのだ。つまり、血筋が良い・生まれが良いから、gentle穏和なのだ。
血筋が良い・生まれが良いからといって威張り散らしていたのでは、治安を維持できず、反逆を生む。それ故、王や貴族・紳士は、庶民に対して親切かつ穏和に接し、庶民は、王や貴族・紳士に敬意をもって接することにより、平穏な暮らしを営むことができるのだ。
我が国でも、生まれ育ちの良い人は、子供の頃から「君子」(人格者)たれと教えられているので、通常、威張り散らしたりしない。
例えば、殿様と雖(いえど)も、威張り散らして行跡が悪いと、お家お取り潰しの憂き目に遭うので、鎌倉時代以降、「主君押込(しゅくんおしこめ)」と言って、重臣たちが合議して殿様を押し込めること(監禁すること)が行われた。
戦前、衆議院議員選挙法(明治二十二年法律第三号)では、選挙人(投票する人)は、「日本臣民の男子にして年齢満二十五歳以上」(第六条第一項)とされ、満一年以上直接国税十五円以上を納める者(但し所得税については満三年以上を納めることが必要)に制限され(第六条第三項)、被選挙人(議員候補)になるにも、「日本臣民の男子満三十歳以上」で満一年以上直接国税十五円以上を納める者(但し所得税については満三年以上を納めることが必要)に限られていた。
当時、15円でお米が約300kgも買うことができたので、納税額15円はハードルが高ったため、当時の有権者数は、約45万人で人口の約1%にすぎなかった。
つまり、制限選挙制が採られていたため、地元の旧家や名士だけが選挙権・被選挙権を有していたので(成り上がりも少なからずいたが)、議員になって威張り散らすと家の恥だから、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」というように、君子たらんとした。
ところが、戦後、普通選挙制が導入され、何処の馬の骨とも分からぬ連中が議員になれるようになったため、恥を恥とは思わず、パワハラを行う議員が出てきたわけだ。
地方議員による自治体職員に対するパワハラを禁止する条例が制定されつつあるが、国会議員による自治体職員のパワハラについても、条例で規制すべきだろう。
問題は、東京に住所がある国会議員に地元選挙区たる地方公共団体の条例の効力が及ぶかどうかだ。
条例は、当該地方公共団体の区域においてその効力を有し、地方公共団体 の区域内であれば、原則として、住民であると否とを問わず、効力を及ぼす(属地主義の原則)。
したがって、当該地方公共団体の区域外にある者に対しては、その者が 当該地方公共団体の住民であっても、原則として、当該地方公共団体の条例の適用 はない。
しかし、条例の規定対象となるものに関して、当該地方公共団体の区域内にお いて所有し、又は占有するなどの権益等を有しているような場合には、そのことを 通じて当該地方公共団体の区域外にある者であっても、当該地方公共団体の条例が 適用されることがあり得る。
例えば、市外在住の人が市内に不動産を所有している場合には、市税条例が適用されて固定資産税が課される。
とすれば、ヘイト禁止条例と同様に考えて、当該地方公共団体の職員を守るため、区域外で行われたパワハラであっても、当該職員に対するパワハラについては、当該地方公共団体の条例の効力が及ぶと解することもできよう。
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