「憲法記念日の3日、護憲を掲げる「憲法大集会」が東京・有明防災公園で開かれた」そうだ。
立憲民主党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党が勢揃い。
方法論などで違いはあれど、同じ穴の狢(むじな)だということがよく分かる。
「登壇した立憲民主党の辻元清美代表代行はロシアのウクライナ侵略について「憲法9条を持ち『あらゆる紛争を武力で解決しない』と言っている日本こそ仲介の先頭に立つべきだ」と述べ、「石破茂首相がやらないなら、私たちが議員外交でしっかりと務めたい」と強調した」そうだ。
4党の国会議員たちが、侵略戦争を遂行するロシアと自衛戦争を遂行するウクライナの間に入って、どのように仲介し、和平へと導くのか、ぜひお手なみを拝見したいものだ。
これまでの歴史を振り返ってみれば明らかだが、日露戦争時の米国(セオドア・ルーズベルト大統領)のように、戦争当事国を上回る軍事力を現実に行使できる国力豊かな国でなければ、仲介役は務まらない。
憲法第9条に縛られた日本の石破首相が先頭に立って仲介をしたところで、上手くいかないことを承知の上で、世論を煽って、石破首相に敢えて火中の栗を拾わせて、失敗の責任を追及し、日本を笑いものにし、又は石破首相が仲介役を買って出ないことを追及して、退陣に追い込み、政権交代を図りたいだけであって、議員外交で仲介できると本気で思っているわけではあるまい。
口から出任せを言うのは、左翼の常套手段だ。出鱈目ではないというのであれば、ぜひその舌先三寸で仲介役を見事果たして和平を実現してほしいものだ。実現すれば、世界初の議員外交による和平としてノーベル平和賞受賞は間違いない。
また、同じ5月3日、共産党系の「平和憲法を守る八重山連絡協議会」が、「九条の碑」前で集会を開き、「大浜明彦共同代表は憲法99条を理由に改憲は「憲法違反だ」と主張」したそうだ(太字:久保)。
憲法第99条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と憲法尊重擁護義務を定めているだけで、憲法改正を禁止しておらず、むしろ憲法第96条に憲法改正規定が置かれていることを知らぬのだろうか。
5月3日の『赤旗』によると、「日本共産党の山添拓議員は4月15日の参院外交防衛委員会で、日米が中国を仮想敵と明示して実施した共同軍事演習は憲法が禁じる「武力による威嚇」で許されないと追及し」たそうだ。
「演習」とは、「 軍隊で、実戦に慣れ、また、平素訓練した戦闘能力をためすために、実戦の状況を想定して行なう、軍事行動の練習」をいう(小学館『精選版 日本国語大辞典』)。
仮想敵国を想定して、演習をすることは、世界中のあらゆる軍隊が行なっていることだ。日米が中国を仮想敵国にしたことが気に入らないのかも知れないが、中国も、当然日米を仮想敵国として演習をしている。例えば、中露合同軍事演習がそうだ。
問題は、軍事演習が憲法第9条第1項が禁止する「武力による威嚇」に該当するかどうかだ。
この点、「武力による威嚇」とは、現実にはいまだ武力を行使していないが、その前段階の行為、すなわち、自国の要求を受け入れなければ武力を行使するという態度を示すことによって相手国を威嚇し、強要すること(例えば、1895 年の三国干渉、1915 年の対中 21 カ条要求等)をいうとされ、「武力の行使」 に加えて「武力による威嚇」が禁止されるのは、これが、国際紛争の平和的 解決の主義に反することはもとより、「武力の行使」又は「戦争」につながる性質を有するためであると考えられている(佐藤功『憲法(上)〔新版〕』113頁)。
政府見解も同様であって、「「武力による威嚇」という憲法第 9 条の規定はかように考えてお ります。すなわち、通常、現実にはまだ武力を行使しないが、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使する、こういう意思なり態度を示すことによって相手国を威嚇することである、このように説明されておりまして、学説も多くはこのように書いてございます。 それで、具体的な例として、例えばかってのいわゆる三国干渉ですとか等々のようなものが例に挙がっているのが「武力による威嚇」の例だろうと存じます。」(参・PKO 特委 平 4.5.29 工藤内閣法制局長官)
そうだとすると、当該日米共同軍事演習が中国を仮想敵としたものかどうかは不明だが、仮に中国を仮想敵としてものだとしても、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使する、こういう意思なり態度を示すことによって中国を威嚇していない以上、「武力による威嚇」には該当しないことになる。
憲法の教科書や政府見解から容易に推論できるのに、敢えて国会で追及するのは、中国向けのパフォーマンスではないかと勘ぐられても仕方あるまい。
ちなみに『赤旗』のサイト内検索で「中露合同軍事演習」を検索したが、まったくヒットしなかったので、報道していないのだろう。日本を仮想敵国としているであろう中露合同軍事演習を批判しないのはなぜだろうか。
このように5月3日憲法記念日に、左翼が「憲法を守れ!」、「9条を守れ!」、「世界平和!」などと喚いているのを尻目に、中国は、武力を行使して、我が国の領海・領空を侵犯している。これは、決して「演習」ではない。
すなわち、「5月3日12時過ぎ、尖閣諸島の我が国領海に中国海警船が4隻侵入するとともに、同領海内に侵入した中国海警船から発艦したヘリコプター1機が同諸島周辺の我が国領空を侵犯した」
なぜ4党が勢揃いした「憲法大集会」は、これを糾弾しないのか。どこの国のために働いているかが分かるというものだ。
<追記>
5月3日、社民党副党首で参議院議員の大椿ゆうこ氏は、「憲法大集会」の前に開催された「国際展示場駅前集会」にて、「社民党は、今やじってる右翼の皆さんも、ここにいる誰一人、戦争には行かせないよ!」と絶叫していた。
中国やロシアが日本に対して侵略戦争をしかけてきても、「誰一人、戦争には行かせないよ!」というわけだから、自衛戦争をさせないという意味になる。
いわば殴られている被害者の手足を縛って反撃できないようにして、殴られ放題にするわけだ。
このように敵に利益をもたらす行為を利敵行為という。利敵行為は、諸外国で法律によって禁止され、違反者には刑罰が科されている。
我が国の刑法も、「日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは二年以上の拘禁刑に処する。」として、外患援助罪を定め(第82条)、未遂罪も定めている(第87条)。
昭和22年の刑法改正により通謀利敵罪(第83条から第86条まで。第89条)が削除された。
公党の副党首が公然と利敵行為をすると宣言している以上、これらの規定の早期復活が望まれる。
cf.昭和22年改正前の刑法
第八十三条 敵国ヲ利スル為メ要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
第八十四条 帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処ス
第八十五条 敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス
2 軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ
第八十六条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
第八十九条 本章ノ規定ハ戦時同盟国ニ対スル行為ニ亦之ヲ適用ス
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