下記のNEWSポストセブンの「文在寅政権の南北融和と反日路線は「韓国の憲法」に根拠あり」という記事は、大変簡潔で分かりやすい。
憲法学者の甲斐素直・日本大学元教授(同大大学院法学研究科講師)の「「大韓民国臨時政府は、日韓併合期に李承晩ら独立活動家によって上海に設立されたが、どの国からも承認されず米軍に解体された。世界から認められなかったこの臨時政府の正統性を韓国憲法が宣言していることは、日韓併合そのものを否定していると読むことができる。日韓の歴史認識を巡る対立の根源がここにあるといっていいでしょう」というコメントは、的確だ。
韓国の憲法前文によって、反日が既定路線とされているわけだ。これは、韓国の自主的・自律的判断だから、我が国政府があれこれ言うことは、内政干渉になる。
後世の歴史家が判断するだろう。
日韓の歴史認識を巡る対立の原因は、韓国にだけあるわけではない。日本政府にもあるのだ。むしろ日本政府側にほとんど原因があると言っても過言ではない。
まず、火に油を注いだのがいわゆる「河野談話」だ。
平成5年8月4日「慰安婦関係調査結果発表に関する 河野内閣官房長官談話」
この「河野談話」は、歴史的事実に反することが学問的に証明されている。
次に、社会党の村山富市総理のいわゆる「村山談話」だ。
「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。」
平成7年8月15日「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)全文
いわゆる「村山談話」は、文末に「この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。」とあるように、本来、村山総理の個人的な意見・感想にすぎないのだが、閣議決定を経た上で、総理が公式に表明し、歴代内閣がこれを承継している以上、日本政府の公式見解と受け止められており、英語版・中国語版・韓国語版まで作られている。
ちなみに村山内閣は、自民党、社会党、新党さきがけの連立政権(自社さ連立政権)だった。自民党総裁で外務大臣だったのが、「河野談話」の河野洋平だ。新党さきがけ代表で大蔵大臣だったのが、高校時代から日本民主青年同盟(民青)の活動家だった武村正義だ。
さらに、この「村山談話」を継承発展させたのが小泉純一郎総理のいわゆる「小泉談話」だ。英語版・中国語版・韓国語版まで作られている。
「我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。」
平成17年8月15日 「内閣総理大臣談話」(終戦60年) 全文
「村山談話」と「小泉談話」は、我が国がかつて「植民地支配と侵略」をしたと述べている。
しかしながら、数世紀にわたる欧米の植民地支配と日本が行った統治が同一のものだとは到底言えないし、また、国際法上「侵略」の定義が確立されたのは戦後であって、これを戦前戦中に当てはめることは、事後法の禁止に違反する。
そこで、おそらく安倍晋三総理のいわゆる「安倍談話」は、「植民地支配と侵略」という定番のフレーズを用いていないのだろう。英語版、中国語参考仮訳、韓国語参考仮訳が作られている。
平成27年8月14日 「内閣総理大臣談話」(終戦70年) 全文
しかしながら、安倍総理は、参議院予算委員会(平成26年3月14日)の答弁で、「歴史認識については、戦後50周年の機会には村山談話、60周年の機会には小泉談話が出されている。安倍内閣としては、これらの談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる。」と述べるとともに、慰安婦問題については、「いわゆる「河野談話」がある。この談話は官房長官の談話であるが、菅官房長官が記者会見で述べているとおり、安倍内閣でそれを見直すことは考えていない。」と明言している。
日本国憲法を隅から隅まで読んでも、内閣総理大臣に歴史認識を表明する権限や歴史を断罪する権限が与えられていないにもかかわらず、歴史問題について、歴代内閣総理大臣が閣議決定を経て公式見解を表明し、これを継承し続けていることは、違憲だ。
これが日韓の歴史認識を巡る対立に拍車をかけているのだ。
石破総理が続投を表明し続けている理由の一つは、おそらく戦後80年の内閣総理大臣談話を表明して、レガシィとして残し、レジェンドになりたいからではないか。
おそらく歴代内閣の談話を継承するだろうが、トラブルの原因を新たにつくり出す危険がある。
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